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「日本で常勤として働くホワイトカラーの外国人財300名を対象にした調査:日本人は仕事の精度が高い反面、無駄な会議が多く時間の管理に課題-約8割が現在の就労環境に満足していると回答する一方、人事や評価の仕組みは不満-(アデコ株式会社、2017年11月30日付)を読みました。
少子高齢化が進む中、日本の労働人口減少が続く中で、国内経済を活性化するための、多様な価値観や経験を持つ人財を活用してイノベーションを促進することが重要であると考えられています。入国管理局としても、平成24年(2012年)より高度外国人材の受入れを促進するため,「高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度」を導入しています。

人材の言葉の意味は、仕事をきっちりと処理できる人のことをいい、組織の中で適切に対応可能な人物のことを指します。その人の個人的なパフォーマンスよりも、組織の力を引き上げる能力を持っている人を示しているため、主体性だけでなく協調性も備えている必要があると考えられています。
人財とは、人が会社経営にとって財産であるという意味合いの言葉です。財産と聞くとお金をイメージする人も多いかと思いますが、どちらかというと「価値」を表す言葉として使用されているようです。もちろん、お金という意味合いも含まれての価値なので、企業がその人に投資をすることによって得られる利益まで含めた表現であると言えます。
ちなみに、人財という言葉は、その人が投資対象として適切かという「ヒューマンキャピタル=人財」から産まれた表現であるため、そもそもの意味合いはお金ですが、現在では人は宝であるという価値を意識した使い方をする経営者が多いと思われます。
日本で働くホワイトカラーの外国「人財」の多くが、現在の就労環境に全体としては満足しており、これからも日本で働きたいと考えていることがわかったとしています。その外国「人財」が日本で働き始めた動機について、仕事の種類や給与水準ではなく、日本という国自体への興味が大きいことも明らかになったともしています。
しかし、人事制度や評価制度に対しては不満を持っており、その主な理由として、日本の企業では生産性やパフォーマンス以外の部分で評価されることが多いと感じているとしています。更には、外国人だからということが理由で機会が与えられなかったことがあると考えていた回答者も多く、男女平等のより一層の改善と合わせ、日本企業におけるダイバーシティの拡大を望んでいるとしています。
そもそも、おそらく価値観の違う環境で育って来たであろう外語「人財」が、日本企業の仕組みに対して差異があることを感じるのは当然と考えるのが自然ではないでしょうか。

行政書士ADRセンター東京では、「東京都内に事業所を有する事業者(事業を行う個人を含む)に雇用されている外国人(日本国籍を有しない者をいう。)もしくは派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第2条第2号に規定する派遣労働者をいう)であって派遣されている派遣先の事業者が東京都内である外国人を一方又は双方の当事者とする宗教、慣習その他の文化的価値観の相違に起因して生じた当該事業所内における労働環境、職場環境に関する紛争」(行政書士ADRセンター東京規則抜粋)を取扱う分野の一つとしています。
今後の日本経済の発展に欠かせないであろう外国「人財」と日本企業の仕組みの差異を調停の場で解決する手段として利用拡大が期待されるところです。

東日本大震災の起こった2011年3月11日から,もうすぐ6年が経とうとしています。

当時震災を経験した外国人に話を聞いてみると,「地震のない国から来たので,揺れが怖かった。」 といった地震に不慣れゆえの恐怖とともに, 「日本語の避難指示が読めなくて,困った。」「日本語で報道される震災の状況がすぐに把握できず不安だった。」 など,日本語がよくわからないゆえのつらさを思い出す方がいるようです。

外国人にとって,災害時に,日本語がわからないために必要な情報を得られないのは,まさに命に関わる問題です。

また,外国語がわからないために外国人に必要な情報を伝えられないのは,同じ地域に暮らす日本人にとっても問題です。

震災を教訓に,福島県は日本語が苦手な外国人を対象にSOSカード(ひらがなや英語を添えたイラストのカード)を作成したとのことですが,お互いの言語がよく理解できなくても最低限の意思の疎通ができるように,備えておく必要があるでしょう。

なお,公益財団法人仙台観光国際協会が,地震について知識や経験のない外国人住民を主な対象として,地震に対する備えや地震が発生した場合の対応について説明した多言語防災ビデオ,【ダイジェスト版】「地震!その時どうする?」をYouTubeで公開しています。

学校や職場に外国人のいる方は,こうしたビデオを参考に,外国人と避難訓練や,地震が発生したらどう行動するかについての話し合いを行うと良いかもしれません。

備蓄や非常用持ち出し袋と同じように,「地震に備えて,日本人と外国人でともに行動したことがある」という経験も,いざという時に心強い備えになります。

忘年会など,職場の人たちとのおつきあいが増える時期になりました。

日本人同士であっても,異なる世代との宴会でマナーが違って戸惑ったり,話題に困ったりすることがあると思います。まして外国人が相手となると,どうおつきあいをすればよいのかと戸惑う人もいるでしょう。

 

たとえば,そもそも,職場の外国人を仕事の後に酒の席に誘うことについて,

「外国人は,仕事の時間が終わればプライベートな時間を大事にするから,仕事の後に職場の人間と過ごすことを好まない。誘うと迷惑になる。」

といった話をどこかで聞いたことはありませんか。

たしかに,特にこどもがいる人には,プライベートな時間を大事にする傾向があるようです。

 

しかし,もし,自分が外国で働いて一人暮らしをしている場合に職場の同僚から酒の席に誘われたらどう思うか,想像してみるとどうでしょうか。

むしろ,誘われたらうれしい場合もあるとは思いませんか。

その国の食文化に興味がある場合に,自分一人では入りにくいような地元の人でにぎわう店に食事に誘ってもらえたら良いチャンスだと喜ぶかもしれません。

 

外国人の場合でも,同僚からのお誘いをどう受け止めるかは,その人の好みや事情によって違うでしょうから,誘っては迷惑だろうと決めつけず,試しに誘ってみると良いと思います。

(なお,「本当は酒の席に行きたくなくても,職場の人に誘われたら無理をして来るのではないか?」と心配する人もいるかもしれませんが,おそらく,たいていの外国人は,本当に嫌だったらきっぱりと断ります。)

 

考えてみたら,仕事帰りに飲みに行くことを好むかどうかは,日本人の場合でも,人それぞれです。

外国人だから,日本人だからと最初から決めてかからず,「その人個人はどうなのか」を考えてみること,相手に確かめてみることが,おつきあいをする上で大切ではないかと思います。

「遠足で,お弁当を楽しみに山登りをがんばりました。」

「運動会で,友達と一緒に食べたお弁当はおいしかったです。」

 

日本では,小学校時代に,秋の行事の作文で,このような文章を書いた覚えのある人は多いのではないでしょうか。しかし,国によっては,「遠足」「運動会」といった学校行事がないことや,「弁当」を持っていくという文化や習慣がないこともあります。

 

たとえば,ある国では,そもそも冷たい食事をとる習慣がないため,冷えた食事を持ち歩く「弁当」のような習慣はないそうです。

もし,このような国から日本に来た外国人の児童生徒が,通っている学校から,突然「明日は遠足なので,お弁当を持ってきてください。」と言われたら,本人はもちろん,保護者も困ってしまうでしょう。

逆に,日本に生まれ育ち,弁当を持って遠足に行くことをおなじみの学校行事と思っている人からすれば,「弁当」を理解できない人がいることに戸惑いを感じるかもしれません。

(ちなみに,弁当は,最近では「BENTO」という言葉がそのまま通用するくらいに海外で注目を集めているそうです。日本の弁当は,日本ならではの独特なものであるようです。)

 

また,とある国の出身者の話によると,日本に来て間もないころ,学校から,行事に弁当を持ってくるように言われて,「学校に給食費を払っているのに,どうして学校が昼食を用意してくれないのだろう?」と,違和感があったそうです。

これは,学校側にしてみれば,当然,ふだんの給食と行事の弁当は別のもので,わざわざ言うまでもないと思ったのでしょう。しかし,そのことを知らない人は,何の説明もなければ,なぜなのかわかりません。

 

言語や宗教の違いに比べると,学校行事や弁当など小さなことにも思えますが,小さなことでもストレスやトラブルにつながることがあります。

文化や習慣が異なると,自分には当たり前のことが当たり前ではない場合がある,ということを知っておくのは,とても大切なことだと思います。

156753日本へ入国する外国人の数は年々増加傾向にあり、2013年には初めて1000万人を超え、2015年には1900万人も超えました。

けれども実は、労働力としての人材は慢性的に不足しており、現在、先進国間では、外国人労働力の獲得競争が激化している状況です。

既に、人材不足によって閉店を余儀なくされているチェーン展開のレストランも出ており、この状況は、オリンピックを数年後に控えている日本にとって、とても深刻です。

ちなみに在留外国人の内訳としては、中国や韓国などからの中長期在留者が減少し、ベトナムやネパール、台湾、フィリピンからの流入が増えており、彼らの中では、 行き先の国としては、ドイツが人気のようです。

日本と同様に高齢化が進み、労働力人口の確保が求められるドイツでは、積極的な外国人労働力の受け入れを進めており、既に、多くのベトナム人が定住していることもあって、ベトナム人にとっては安心して行きやすい国、ということになるようです。

日本は元来、外国人の受け入れには消極的であり、その待遇面などへの配慮は、他の先進国に遅れをとっていると言えるかもしれません。

今後、優秀な人材を日本に積極的に招き入れていくためには、受け入れ体制の整備や、在留外国人が働きやすくなるための環境確保が求められるのではないかと思います。

その上では、調停というのも、大きな役割を占める可能性もあるのではないか、と思っています。

外国人と企業の間で、文化や慣習の違いから起きるトラブルなどを、前向きに解決することができる調停は、在留外国人が増える、あるいは、増やさざるを得ない日本にとって、貴重な制度になっていくと思います。

海外から人材を受け入れる企業のために、日本での外国人向け研修を行っている会社から、こんな話を聞いたことがあります。

ある国の人たちにとって、企業で働く上で賃金を交渉することは当たり前のことであり、そのため、彼らは賃金交渉を特別なこととは思っておらず、日本で働く場合にも、その習慣をそのまま持ち込む。

しかし日本では、賃金交渉をするということはそれほど一般的でなく、ましてや小さな企業では、そういう行動は目立ちやすく、上司や社長さんが戸惑うのはもちろん、同僚たちの心象も悪くなってしまうことがある、というわけです。

そこでその会社では彼らに、日本で賃金交渉をするということは想像しているのとは違った意味をもたらし、場合によってはやりにくい人、というイメージを与えてしまう可能性があるので、それを理解して行なうように、と伝えるのだそうです。

彼らも、本当に賃金に不満があるとは限らず、習慣として賃金交渉している可能性もあります。そうなれば、彼らにとっても、無駄な誤解を受けるリスクを事前に知っておいた方が、良いということになります。

「ハーバード流交渉術」という本の序文にこんな表現がありました。

~アメリカ人が交渉に挑むときは、まるでカウボーイのように振る舞うことがある。~交渉は敵対者間の闘いと見られている。~(日本人の)交渉は、友人同士の話合いであるかのごとく運ばれ、あからさまな対決はなるべく避けようとする。

「交渉」によって自社にとって有益な結果を導きたい、という「目的」は同じであっても、アプローチの方法は、文化が違えば全然違う、ということですよね。

外国人が日本の企業で働く上で、あるいは、外国人が日本の学校で学ぶ上で、待遇やいじめなど、トラブルが起こった場合には、調停によって話し合って解決する、という方法もあります。

外国人を雇用している企業や、外国人を受け入れている学校においても、そのような状況をなるべく早く、勝ち負けつけるようなやり方ではなく、解決したい、という場合には、「調停」という方法を検討されてはいかがでしょうか。