日本における狂犬病は、1958年以降、発生していません。
狂犬病予防法が制定される1950年以前は、日本国内でも多くの犬や人が狂犬病に感染して死亡していました。しかしその後、狂犬病予防法が施行され、犬の登録や予防注射が義務化されたため、発生が防げているのです。
しかし世界ではいまだ発生し続けている、恐い病気です。1970年に1名ネパールに旅行した人が、2006年に2名フィリピンに旅行した人が、現地で犬に咬まれ、日本に帰国後、発病して亡くなっています。
世界の中でも、狂犬病を撲滅できている国はわずかしかありません。厚生労働省の2013年更新の資料によれば、狂犬病清浄地域と指定されているのは、日本、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、ノルウェー、アイルランド、アイスランド、イギリス、ハワイ、グアム、フィジーくらいです。
さらに狂犬病は、犬だけではなく、人を含むすべてのほ乳類に感染します。万が一、狂犬病の動物に咬まれた場合は、発症前のワクチン接種で助かりますが、ひとたび発症してしまうと有効な治療法はなく、ほぼ100%死に至ります。狂犬病ウイルスは、狂犬病に感染した動物の唾液に含まれており、罹患した動物に咬まれることで感染していきますので、狂犬病においては、予防が何より重要なのです。
そのため日本では、犬の飼い主に、
・市区町村に飼い犬の登録をすること
・年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
・犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
などが、法律により義務付けられています。
地区によっては、集合注射を開催している場所もあり、春になると、獣医さんから案内が送られてくる飼い主さんも多いと思います。
ところが実は、日本における狂犬病の予防接種の接種率は、実は、現在とても低くなっているのです。厚生労働省の発表によれば、概ね予防接種頭数は、70%ちょっとということになります。けれどもこれは、厚生労働省の把握する登録犬数ということですので、実際には、もっと低い割合になっているかもしれません。
日本では無縁のようになりつつある狂犬病ではありますが、世界中と人が行き来する現代ですから、旅行者が持ち込んだり、輸入した動物から感染することも無いとは言えません。ですからしっかりと予防をして、気をつけておきたいですね。