【コラム】調停の3タイプ

行政書士ADRセンター東京では、「対話促進型調停(自主交渉援助型)」という調停スタイルを採用しておりますが、もちろんこのほかにも、調停にはスタイルがあります。主には、「評価型調停」「妥協要請型調停」です。

それぞれの特徴をご紹介します。

「評価型調停」とは、法律的知識などをもつ専門家が調停人になることによって、法的評価などに基づいて、解決策=合意を導いていく調停です。日本における裁判所での調停の多くはこのタイプと言えます。

法律的な評価によって判断をするため、解決が早い、というのが特徴です。また、法律というものに基づくので、調停人が誰であっても判断が同じようになりやすい、と言ったこともあるかもしれません。

「妥協要請型調停」とは、例えば、地元の名士や町長さんなど、当事者双方が知っている権力者などに調停人になってもらい、両者の主張の中間的なところでの解決=妥協を導く調停です。

当事者双方が一目置いている人を調停人にするため、この人が言うなら仕方がない、ということで当事者がその判断を受け入れやすく、間をとった解決策なので、喧嘩両成敗的な理屈で諦めやすいと言えます。

これに対して、「対話促進型調停」は、中立公正な第三者が調停人になり、当事者同士の話合いや交渉の進行役となることによって、当事者の対話を促進して、自主的な交渉を援助して、本音からの解決を導く調停です。

各当事者が自分の意見や希望をしっかりと伝え合い、納得いくまで話合い、自主的に、双方が満足できる解決策を探していくため、本人たちの満足度が高くなりやすいと言えます。

ここで、「ハーバード流交渉術」でも紹介されている、とても分かりやすい寓話を、簡単にご紹介します。

姉妹が1個のオレンジを巡って争っています。姉も妹もオレンジが1個欲しいと言って聞きません。さて、どうしましょう。という問題です。

例えば、これをもし「評価型調停」で解決したならば、どちらの主張により正当性があるか、によって判断し、どちらか一方にオレンジ1個を渡し、どちらかはなにも得られずに終わるかもしれません。つまり、WIN-LOSE(ウィン—ルーズ)の状態になりやすいと言えます。

あるいは「妥協要請型調停」で解決したならば、オレンジを半分に切って、双方に半分ずつ与えて、解決するかもしれません。どちらもお互い半分ずつニーズを満たすことができましたが、当初の希望よりは、分量が半分減ってしまいました。

さて、これをもし「対話促進型調停」で解決したらどうなるでしょう。

試しに対話を促進して、2人の話をよくよく聞いてみれば、姉は、オレンジの中身を使ってジュースを作りたいと思っており、妹は、オレンジの皮を使ってケーキを作りたいと思っていることが分かりました。ということは、一個のオレンジを皮と中身とに分けて、お互い欲しい方をとれば良かったのです。

ちょっとうますぎる話のように思えるかもしれませんが、話し合ってみたら、双方の目的を同時に満たすことは可能だった、ということも少なくないのです。

もちろん、対話促進型調停にも短所があります。本人たちが納得いくまでじっくりじっくり話し合うため、その裏返しとして、他の方法に比べて時間がかかる傾向にある、ということが言えます。また、双方がどこまでも納得できなければ、合意できないという結論になることもあります。

なにごとも長所もあれば短所もあります。でも、トラブルが起きた場合の解決方法として、対話促進型調停は、とても良い選択肢のひとつではないでしょうか。