2016年11月12日、都内で開催されたペット法学会・学術集会シンポジウムに参加してきました。テーマは「動物愛護法と科学的知見」。
総合科学としてのペット法を視野に入れ、社会的要素を加味しながら、さまざまな切り口からペットにかかわる法律を検討していきましょうという内容のものでした。
○科学的知見が必要とされた背景 ~動物の福祉の向上のために~
「動物の福祉」とは、一言でいえば、「動物が精神的・肉体的に健康で、幸福であるということ。日本では、元来、動物を命あるものとして、心があると考え、動物を人と同じように扱う傾向がありました。
しかし、人間の気持ちの思うままに、動物をかわいがるということが、果たして動物にとって、真の幸せであるとも限りません。
西洋では、キリスト教的な世界観から、「残酷なのは、不必要な苦痛をあたえること」であり、人間の繁栄のために動植物を利用することは、神から与えられた正当な権利であると考えられてきました。つまり、動物を食肉として利用したり、科学上の利用に供したりすることを認めながら、動物の命を軽視せずに、動物にとってより良い生活をさせるという考え方ですね。
人間には、人間の管理下にある動物たちのニーズ(生理的、環境的、行動的、心理的、社会的)を満たしてあげ、動物たちができる限り快適に、苦痛を受けずに生活できるようにする義務と責任があります。
そして動物の飼育・管理にあたっては、その方法を人間から見た「感情」ではなく、様々な視点から検討を加え、科学的・客観的な根拠(すなわち科学的知見)を加味して検討していく必要があり、特に動物愛護法の改正を議論する場面では、科学的知見の存否を調べ、立法の合理性を検証していく必要があります。
○動物の飼育管理方法を科学的に説明するための指標
動物の飼育管理方法を科学的に説明するための指標のひとつとして、多用されているのが生理学的指標です。(例えば、ストレスによる主な生理的反応として、自律神経系では、アドレナリン、心拍数が増加、内分泌系では副腎皮質刺激ホルモンが血中で増加するなど)
○科学的知見の実際の例…「成猫の夜間展示に関する調査」
ペットショップなどでの夜間展示は、犬、猫の睡眠不足やストレスに配慮して、午後8時から午前8時まで禁止されていますが、猫カフェについては、一定の条件つきで、午後10時まで延長と規則が改正されました。
それは「コルチゾール」というホルモンの濃度を調べることで、猫がどれだけストレスを感じているかを測ったところ、午後8時と午後10時の猫の状態を比べても差がなかったこと。また夜行性の猫は、夜に活発に動くので、営業時間を短縮しすぎると、ケージに入れられ、逆にストレスがかかってしまうということがあったようです。
○その他の科学的知見の活用
・幼齢(8週齢)規制・導入時期の調査状況
・飼養施設基準の明確化
・マイクロチップに必要性 など
○動物たちの真の幸せってなんだろう?
コトバをしゃべれない動物たちの行動から、彼らの気持ちを汲んであげられればいいですが、それで補えない部分は、科学的な知見で補っていく。動物が、動物らしく生きるために、科学的知見の活用も取り入れることが必要不可欠なのかも知れませんね。