賃貸住宅に関するトラブルトピックス

【コラム】ペット飼育と原状回復特約

最近、ペットの飼育可の賃貸物件が増えてきました。それを受け、ペット物件を退去する際に、ペットがつけたキズや臭いが原因で原状回復費用が高額となり、借り主と大家との間で揉めるケースも増加しています。

そもそも、賃貸物件を借りている人には、原状回復義務が課せられています。ここでいう「原状回復」とは、借りた当時の状態に戻すことではなくて、借り主が故意または過失によって通常の使用方法を超えたひどい使い方をして壊したり、汚したりした部分のみを復旧することです。つまり、通常の使用方法をしていて、自然についたキズや汚れの場合は、借り主は原状回復義務を負わないとうことですね。

さて、ここで賃貸物件におけるペット飼育について考えてみたいと思います。

例えば、もともとペット禁止のマンションでこっそりペットを飼っていた場合であれば、当然、借り主が契約義務違反ということになりますので、退去させられることもありますし、また、ペットによる汚れやキズがあれば、通常の使用を超えるものとして原状回復の義務が生じます。

しかし、ペット飼育可のマンションであれば、ペット飼育による、ある程度の汚れやキズは当然に予想され、ペット飼育による通常損耗についての原状回復費用は家賃の中に含まれているのが一般的です。そのため、ペット飼育における通常の損耗に当たる場合には、大家さんがその費用を負担することになります。しかし、必ずしも大家さんの負担となるわけではないようです。

さてここに、ペット飼育における原状回復特約に関する判例があります。(東京簡裁平成14年9月27日判決)退去時の「ペット消毒特約」について定めた事例で、「『ペット消毒については賃借人の負担でこれを行なうものとする。尚、この場合専門業者へ依頼するものとする。』」との合意は、ペット飼育した場合には臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒のために上記のような特約をすることは合理的であり、有効である。」として、ペット消毒のためのクリーニング費用を原状回復費用として認めました。これは、いくらペット飼育がOKであっても、借り主がどの程度原状回復義務を負担するかは、契約で原状回復に関してどのような特約があるかによって違ってくるということですね。

ペットを飼っていれば通常発生するキズや汚れ、臭い等にあたるかどうかについては専門家であっても判断がつきにくいため、実際に退去時の大家さんと借り主との争いはつきません。もし、皆さんが争いに巻き込まれた時は、調停という「話し合い」で解決する方法があることを是非、思い出してください。